今回のテーマは、「すばらしいアート作品とはどのようなものか」についてです。
みなさんはどのようなアート作品を素晴らしいと思いますか?技術力が高い作品でしょうか?
本物と見分けがつかないほどの精巧な作品でしょうか?
このテーマについて教えてくれるのは、末永 幸歩(すえなが ゆきほ)さん著書の「13歳からのアート思考」のCLASS1「「すばらしい作品」の部分です。
この書籍は芸術の教養を深めるのに非常に良い本だと思い選定しました。
目次
なぜ「13歳からのアート思考」を選定したのか
芸術に関する教養を身につけることは、何となく必要なことであると考えていました。
巷の雑誌や「教養特集」に、芸術の分野が入っていることが多いからです。
しかし、「作品の題名や制作年、作者の生い立ちやこの作品が生まれた背景」を理解したところで、教養が身についたといってよいのか疑問がありました。
ただの知識のインプットに過ぎないのではないかと考えていたためです。
そう思っていた矢先にこの本に出会いました。
この本は「自分なりのものの見方や考え方を手に入れる」ことを目的とし、アート思考(※)を手に入れることの重要性を述べています。
この考えに非常に共感しました。 (※ アート思考:「自分だけの視点」で物事を見て、「自分なりの答え」を作り出すための作法)
本書を読んで自分の考えをまとめることで、「自分なりのものの見方や考え方を手に入れる」ことを目指したいと思います。
【要約】「13歳からのアート思考」 CLASS1「「すばらしい作品」ってどんなもの?」
「すばらしい作品」の考え方はルネサンス期(14世紀)~20世紀までと、20世紀以降で大きく異なっています。
■ルネサンス期(14世紀)~20世紀まで
「すばらしい作品」とは、「目に映るとおりに書かれた絵」。
それはなぜでしょうか。
ルネサンス期の画家は主に「教会」や「お金持ち」によって雇われ、依頼された絵を描いていました。
「教会」が求めたのは、キリスト教をテーマにした宗教画であり、より多くの人に聖書の内容を伝えるため「現実味を帯びた絵画」が求められました。
また、「お金持ち」が求めたのは、「肖像画」。そこで求めたのは生き写しのような正確な表現でした。
このように、一貫して求められていたのは「写実的」な表現でした。
■20世紀~
カメラの登場により「目に映るとおりに世界を描く」というルネサンス期以降のゴールが崩れてしまい、アートの意義が問われるようになりました。
そのため、「アートでしか実現できないことは何か」とアーティストは考えるようになり、自分なりの考えを提示するような作品が生まれるようになっていったのです。
本書では、アンリ・マティス(1869~1954 フランス)の≪緑の筋のあるマティス夫人の肖像≫が紹介されています。
それは、マティスがカメラの登場で浮き彫りになった「アートにしかできないことは何か?」という疑問に対して、彼なりの答えを提示し、アートの常識をひっくり返した作品だからです。
マティスの絵は当時の評論家からは「野獣のような色彩のひどい絵だ」と酷評されていたが、現代においては「すばらしい作品」として世界中で評価されています。
素晴らしい作品とは、「アートでしか実現できないこと」を表現している作品だ
テクノロジーの進化は、アートにまで影響を及ぼしていたのですね。
カメラの登場が、「目に映るとおりに書かれた絵が素晴らしい」とするそれまでのアートの世界に多大な影響を与え、「アートでしか実現できないこと」を求めるようになったということを理解しておくことはアートの教養の1つとなると思います。
ところでみなさんは、マティスの≪緑の筋のあるマティス夫人の肖像≫を買いたいと思いましたか?
また、買うとしたらいくらで買いますか?
このようなことを考えてみるのもアート作品の楽しみ方の1つではないでしょうか。
私は正直買いたいとは思いませんでした。
「もっと綺麗な自分の奥さんを描けばいいのに」とすら思ってしまいます。
本章では、筆者のこの絵に対する見方が紹介されています。
ただ、それは唯一絶対のものではなく、大事なのは「自分なりの見方・答え」を出すことだと述べています。
また、アートではどんな優れた解釈であってもそれは時代や状況、人によって刻々と変化するものであるとも述べられています。
だからこそアートに面白さがあり深みがあるのだろうと思います。